スイスフランの特徴

スイスフランは、永世中立国というスイスならではユニークな特徴を持つ通貨です。
戦争などの有事の際に買われる傾向があり、安全資産の一つと見なされています。
通貨コードは「CHF」。
慢性的に金利が低いため、スイスフランを売って他の通貨を買う「スイスフランキャリートレード」も盛んです。

有事に強い

スイスフランの大きな特徴は有事に強い通貨であるということです。
これはスイスが永世中立国であるためです。
ヨーロッパの中心部に位置しているスイスは、1815年に国際法上初めて永世中立として認められて以来、政治的中立の立場を貫いてきました。
このため、他国で戦争が起きても巻き込まれる心配が少ないとみられており、戦争や大きな災害など地政学的リスクが高まると、資産の保全のためにスイスフランが買われやすくなります。

とりわけ2001年の米国同時多発テロ以降は、有事の際に米ドルを買う「有事のドル買い」が陰りを見せ、そのかわり、スイスフランが買われる傾向が強くなりました。
逆に、発生したリスクが収束に向かうと、スイスフラン相場は下がりやすくなります。
安全資産とされる「金」(ゴールド)との連動性も高く、世界でもっとも信用されている通貨の一つだといえます。

スイスフランは国際的な決済手段として広く使われており、取引規模は、米ドル、ユーロ、日本円、イギリスポンドに次いで世界第5位。
豪ドルやNZドルなどよりも流動性が高いです。

日本に次ぐ超低金利

スイスは、金利が低い国としても有名です。
世界のなかで日本に次ぐ超低金利国家といえます。
2003年3月から2004年9月まで、スイスの中央銀行は事実上のゼロ金利政策をとり、さらに、2011年8月からもゼロ金利を続けています。
過去10年で見ると、スイスの政策金利がもっとも高かったのは、2007年9月から2008年9月にかけての2.75%です。

このため、スイスフランは、金利のスワップポイントを目当てとする投資対象としては魅力がありません。
短期トレードで稼ぐか、スイスフランを売って他の外貨を買うキャリー取引が中心となります。

スイスが低金利である理由は、過度のインフレになる恐れがほとんどないからです。
スイス人は日本人と並ぶ倹約家として知られ、一人当たりの貯蓄率は日本に次いで世界第2位。
国民があまり買い物をしないため、物価が上昇しにくいのです。
また、日本と同様、自国の通貨高で輸出産業が打撃を受けることが多く、通貨当局が通貨安を狙った低金利政策を好む傾向があります。

「無制限の市場介入」

リーマンショックや欧州債務危機が起きて以来、スイスフランはリスク逃避のための通貨として積極的に買われました。
対ユーロでは、2007-08年に1ユーロ=1.6スイスフランで推移していたのが、2011年夏に1.1スイスフランを割り込みます。
また、対ドルでも急騰し、史上最高値を更新しました。

スイスの中央銀行は11年9月、スイスフラン高の進行を阻止するため、1ユーロ=1.2スイスフランを防衛ラインとする「無制限の市場介入」を発表。
過度の通貨高に歯止めをかけることに成功しました。

1スイスフラン=60~110円がレンジ

一方、対円では、長期的にみると、1スイスフラン=60円~110円くらいがレンジとなっています。
ここ10年では、2007年につけた101円82銭がフランの最高値で、2008年につけた75円01銭がフランの最安値となっています。

スイスフランは日本と同じ「逃避通貨」と見なされており、他の主要通貨に対して円と似たような動きを見せる傾向があります。
このため、円が全面高になったときでも、フランに対しては円相場がそれほど上昇しない場合が多いです。
そのぶん、他の外貨に比べて相場の動きが把握しづらい面があります。

強まるユーロとの連動性

スイスは、政治的に永世中立国なだけでなく、経済的中立をも貫くため、EU(欧州連合)にも参加していません。
しかし、地理的にはユーロ圏に近いため、経済的な結びつきは強いです。
貿易でも輸出の60%、輸入の80%が対EU諸国となっています。
このため、ユーロ圏の景気がスイスフラン相場に与える影響は少なくありません。
とくに隣国のドイツ経済とは密接な関係にあります。

「世界の銀行」と呼ばれる

スイスと言えば、富裕層向けの銀行(プライベートバンク)が有名で、「世界の銀行」と呼ばれています。
スイスの銀行の厳しい守秘義務規定や匿名性の確保には定評があり、こうしたことが、スイスフランに対する「安全資産」としてのイメージをさらに強めています。
銀行以外には、時計や観光などが盛んです。
経済規模が小さいわりにネスレなど世界的な大企業が多いのも特徴です。
また、スイスは資源相場の影響を受けにくい産業基盤を持っているとされており、スイスフランは原油高に強い通貨とも言われます。

KOFスイス先行指数に注目

スイスフラン相場の変動要因となる経済指標としては、スイスの失業率や貿易収支のほか、「KOFスイス先行指数」などがあげられます。
中でも6~9カ月程度先の経済状況を6つの視点から計算するKOFスイス先行指数は、注目度が高いです。