ギリシャショックが為替へ与えた影響

2010年の春、ギリシャの財政不安はユーロ圏全体、さらに世界経済を巻き込んだ大混乱を引き起こしました。

ギリシャは歴史も長く世界的に有名な国家ですが、財政規模はアジアなら台湾やタイ、日本なら神奈川県と同じくらいで決して大きいわけではありません。
なぜこのような大騒動に発展したのでしょうか。

ギリシャ財政危機

きっかけは2009年10月にギリシャで政権交代が行われたことでした。
長く与党であった政党が野党に下り、新しい政党が政権与党になったのですが、新政権が財政をチェックしたところ、巨額の赤字が隠蔽されていたことが分かったのです。

それまで、ギリシャの財政赤字は、国内総生産(GDP)の4%程度と発表していたのですが、その実態は13%と3倍以上であり、累積の債務残高は国内総生産の113%と、国家の危機的状況でした。
硬直化して発展性に乏しい経済や、国内総生産の30%にもなるとされる闇経済(課税逃れ)といった多くの問題が数字としてあらわになったのです。

そこで新政権は財政再建策として大幅な増税や公務員の給与カットを発表しましたが、これに国民が怒りました。
給与や年金が減額される一方で、税金が上がるのですから、当然の反応と言って良いでしょう。
しかもギリシャは長く続いた左派政権により就労人口の40%が公務員という国ですので、人口の4分の1にあたる275万人がゼネラルストライキを起こし、経済は更なる混乱に陥ったのです。

単一通貨ユーロとギリシャ

共通通貨の根本的な問題に、各国の取りうる政策オプションが限られていることが挙げられます。
普通は経済・財政の調子が悪ければ、その国の通貨が売られて安くなり、バランスが取れるようになります。
日本経済が悪ければ円安になり、円安になれば輸出がしやすくなって経済が回復していくという流れと同じです。

しかしユーロ圏の場合は、国ごとにギリシャ・ユーロ安といったことが出来ません。
それどころか全体としてユーロ諸国が活況であればユーロの相場が高くなっていきますので輸出や観光業が不振となりやすく、ギリシャのような国は非常に苦しい立場に追い込まれます。

更に「決まりごと」がギリシャの財政再建を遅らせる可能性も指摘されました。
ユーロ圏は財政規律を守るため、財政赤字の対GDP比率や起債規模が決められています。
つまり既にその基準を超えていたギリシャは、国債発行額(収入)を減らしながら、財政バランスを回復(収入以上に支出を削減)させなければならず、節約しながら景気を良くするという無理難題を付きつけられたことになります。

ギリシャショックとは

ギリシャ財政危機はギリシャ単独の問題ですが、これを受けてギリシャショックと呼ばれる世界的な大混乱が起きました。

一つは「ギリシャと同様の国があるのではないか」という疑心暗鬼が、他の国に向けられたことです。
特に経済的に不安定とされていたPIIGS(豚。ポルトガル、イタリア、アイルランド、ギリシャ、スペインの頭文字をとった造語)諸国は、その一角が実際に崩れたことにより、財政不安をささやかれました。

もう一つは、ユーロ圏は運命共同体的な側面をもっているため、ユーロ加盟諸国全体にダメージを与えるとの見方が強まったことです。
ギリシャのソブリンリスクが現実化し、格付けの低下や、ギリシャ国債の価値下落、最悪デフォルト(国債償還不能)という事態になれば、それを持ち合っているユーロ諸国も損をするので当然の想像です。

これに加え、欧州連合はギリシャを支援するのか、それとも見捨てるのかという方針がはっきりしなかったことも、投資者心理に不安を与えました。
もしギリシャを支援すれば、次に財政危機に陥った国々にも同様の支援をしなければなりませんが、そこまでの余裕はありません。
逆に見捨てるとすれば、ギリシャの破綻がより近くなり、結果的にユーロ圏が本当にダメージを受けることになるのですから、困ります。

結果として「ユーロは全部ダメだ!」というリスク回避の動きになりました。

為替への影響

ギリシャの経済規模は3,575億ドル(2008年、IMF統計)とユーロ圏全体の2.5%程度で、ドイツ(3兆6,731億ドル)の10分の1以下、イギリス、フランスやイタリアにも遠く及ばず、オーストリアやポーランドといった旧共産圏諸国と肩を並べる程度に過ぎません。
日本なら都道府県レベルであり、東京・大阪・愛知より低く、神奈川県と同じくらいです。
もし大阪府が財政破綻しそうだとか、公務員給与が引き下げになるということになれば大ニュースにはなるでしょうが、それで日本円の為替相場が乱高下するという事態にはならないのと同じような規模です。

しかし、ギリシャの財政危機は、ユーロ圏全体を巻き込みました。
格付け各社がギリシャ国債の格付けを引き下げたのを見て、デフォルト不安からギリシャ国債は暴落。
株式市場も世界的に値を下げ、ユーロも多くの通貨との間で下落しました。
例えば日本円に対しては2009年10月に1ユーロ=約140円だったのが、2010年4月には1ユーロ=110円前後と20%以上も価値が下がってしまったのです。