信託保全の義務化について

FX業者が倒産した場合、投資家が預けていたお金はどうなるのでしょう。
法律によれば、全額が戻ってくることになっています。
FX業者は、顧客の資金をすべて「信託保全」することが国の省令で義務付けられているためです。

信託保全とは

2010年2月から、FX業者に対して、顧客(投資家)の資金をすべて信託保全することが義務付けられました。
これは、2009年8月1日に施行された「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」に基づくものです。

信託保全とは、お金や不動産を信託銀行などに預けることによって、資産を保護する措置です。
信託保全の義務化により、FXをしている投資家が業者に預けた証拠金などの資金は、業者が破綻しても、しっかりと守られるようになりました。

区分管理だけでは不十分

2010年2月に制度が変わるまでは、FX業者に義務づけられているのは、「区分管理」(分別管理)のみでした。
区分管理とは、FX業者の自己資金と顧客の資金を別々に管理することです。

しかし、区分管理だけでは、投資家のお金を保護するには不十分という懸念が出ていました。
その理由は、FX業者の中には、「区分管理している」といいながら、実際には顧客の資金を「カバー取引先」と呼ばれる金融機関に預けてしまっているところがあったからです。

カバー取引先とは、FX業者に代わって実際に為替売買を行う金融機関です。
カバー取引先に預けられた投資家の資金は、相場変動などのリスクにさらされることになり、業者の破綻時に全額が戻ってこない可能性があります。

また、FX業者の中には、顧客から預かったお金を担保にして、銀行などから債務保証を受けているところもありました。
こうした場合も、FX業者が倒産すると、投資家の資金の一部が返還されない恐れがありました。

売買資金はFX業者が自ら調達

信託保全の義務化のルールにもとづき、FX業者がしっかりと信託保全していれば、投資家の資金は、為替売買用の資金とは完全に区別されます。
カバー取引先に預ける資金は、FX業者が別途、自ら調達するからです。

この結果、FX業者では、体力のない会社の淘汰が進んでいます。
たとえば、アイフォレックスというFX業者は、信託保全が義務化されると同時に、金融庁から「信託保全が行えない」と判断され、登録取り消しの処分を受けました。

評価益やスワップもタイムリーに反映

信託保全の義務化により、FX業者では日々、顧客(投資)から預かっているお金を算定し、信託しなければなりません。
投資家が預けた証拠金はもちろん、売買によって確定した損益(実現損益)や決済していないポジションの評価損益、スワップ損益を加味して、顧客の資産を正確に把握したうえで、信託する義務があります。

このため、預けた証拠金が10万円だったとしても、5万円の利益が出ていれば、15万円が信託の対象になるのです。
そして、仮に「信託保全をしているのは1週間に1度です」というFX業者がいたとしたら、それは違法だということになります。
損益の状況がタイムリーに信託保全額に反映されていないからです。

FXでは、損益の金額が短時間で目まぐるしく変わります。
業者が信託の金額を日々更新していないと、経営破綻時に全額が返ってこない可能性があるのです。

事業譲渡か清算か

それでは、実際にFX業者が経営破綻した場合、どのような手順で顧客の資産が守られるのでしょうか。

まず、FX業者が破綻するとなった場合、FX事業を他社に譲渡するか、事業ごと清算されるかという選択が行われます。
他社に譲渡することになった場合、信託された資金もそのまま他社に引き継がれるため、投資家の資金には何の変化もなく、そのまま取引を継続することができます。

一方、FX事業の譲渡先が見つからず、すべて清算することになった場合、信託されている顧客の資金はいったん凍結され、動かすことができなくなります。
FX業者や投資家にかわって信託された資金を管理するのは、弁護士などの「受益者代理人」です。
受益者代理人は、信託された資金の総額を確認したうえで、すみやかに投資家に振り分けます。
信託保全が適正かつタイムリーに行われていれば、資金の全額が投資家に戻ってくることになるのです。

投資家としては、FX業者を選ぶ際に、業者が法律にのっとって信託保全を適正に行っているかどうかをチェックする必要があります。

信託銀行が破綻したら?

FX業者の経営が健全でも、信託保全先である信託銀行が経営破綻する可能性があります。
この場合、投資家の資金はどうなってしまうのか、当然気になるところです。

信託法28条において、信託銀行に信託されたお金は、信託銀行の自前の資産と切り離して管理することが義務付けられています。
また、信託法16条では、信託銀行が経営破綻した場合でも、信託された資産は差し押さえることができないとされています。

つまり、FX業者が信託先として選んだ銀行が万が一倒産しても、投資家の資金は全額保護されることになっているのです。