円相場の歴史(2)

為替相場は自由な市場に委ねられるべきですが、行き過ぎた自由はマネーゲームとも通貨戦争とも呼ばれる暴風を引き起こし、一国の経済が吹き飛ぶような事態にもなりました。
円相場もその中で翻弄され続けています。

過去の円相場がどういった理由でどう動いてきたか再び確認し、次へのヒントにしてください。

プラザ合意

各国が協調したドル高政策はインフレの封じ込めには成功したものの、米国に貿易赤字と財政赤字(双子の赤字)を生み出しました。
そこで各国は再び協調して、今度はドル安への誘導を図ることにしました。

これが1985年9月22日に結ばれたプラザ合意です。
1ドル=235円だった為替レートは発表直後の1日で約20円も円高に進み、行き過ぎを是正しようとした1987年2月22日のルーブル合意も為替市場は無視しました。
1988年には1ドル=120円と、3年で半分になってしまったのです。

当然、輸出産業にはダメージがありましたが、この円高を阻止しようとした日本の低金利政策は「金余り現象」を生み、バブル経済の発端になったとも言われています。
実質的にバブルが崩壊する直前の1989年には、(当時としては)異例の低金利もあって1ドル=160円ほどまで、円安に戻す場面もありました。

バブル崩壊、超円高

後からチャートを見れば1990年頃にバブルはピークを迎えていたと分かるのですが、渦中の人々は、その事実に気付いていませんでした。
政府は過熱を抑えようと政策金利を上げ、見た目の貿易黒字は増え、おカネが国内に流入してきて、円は際限なく高くなっていきます。
誰の目にも明らかな不況になっても流れは続き、1994年に1ドル=100円の大台を突破、1995年4月19日には1ドル=79円75銭と当時の最高値を記録しました。

1ドル80円近辺と言っても、2010年末の1ドル=80円と同じではなく、その後のデフレなどを計算に入れた実効為替レートにすれば1ドル=60円を割っているような超円高です。

投機資金の台頭

その後、日本国内ではバブル崩壊後の傷みが次々に表面化し、銀行や証券会社といった金融の根幹が揺らぎました。
もちろん実態とかけ離れた円高は是正が進みましたが、この動きもまた急激であり、円高のピークから3年余りの1998年中頃には1ドル=140円を超えるまでの円安となりました。

この頃から目立ってきたのが投機資金です。
マネーゲーム的に大量の資金が流入し、経済規模の小さい国が狙い打ちにされました。
1997年に起きたアジア通貨危機では、タイ・バーツの暴落を皮切りに各国の通貨が次々に標的にされ、ある程度の経済規模があった韓国までIMF(国際通貨基金)の緊急資金支援を要請するほどの事態となったのです。

デフレと円高基調

1999年から日本は年率で▼1%を超えるデフレに突入しました。
これはインフレの逆ですから、モノの値段が下がり、おカネの価値が上がることを意味します。

具体的に例を挙げてみましょう。

日本が▼1%のデフレ、米国が3%のインフレ(物価上昇率)で、今は1ドル=100円=リンゴが1つ買える価値だとします。
この場合、来年になると日本円なら99円でリンゴが買えますが、米ドルだと1ドル03セント支払わなければなりません。
同じモノを買うのですから、オカネも同じ価値でなければなりませんね?

つまり1ドル03セント=99円ですから、普通の為替表示に直すと1ドル=96円12銭ということになり、黙っていれば年に3円88銭ずつ(見た目の)円高になっていく、ということです。

これが10年も続けば「1ドル=120円が1ドル=80円になっても実質的には同じ」という円高容認説もご理解頂けるでしょう。

円キャリートレードと円安

1999年からは国内がデフレのうえ、2002年2月から2007年10月までは俗に「いざなみ景気」と呼ばれる緩い景気回復期でしたから、円高に振れるのが当たり前です。
しかし比較的安定し、時に円安局面になった大きな理由に「円キャリートレード」がありました。

これは、金利の安い円で資金を調達して、投資効率の良い国で運用すれば儲かるという発想で、円を借りる(現金を引き出す)→円を売って外貨を買う→外貨で運用するという流れになりました。
つまり為替市場で次々に円が売られますので、円安になっていくわけです。

「金利差で儲け、更に円安局面で売ってキャピタルゲインも得られる」と、外貨預金やスワップポイント狙いの長期型FXトレーダーが推奨されたのも、ちょうど2004~2007年のこと。
一時期は1ドル=100円近くまで値上がりしていた円ですが、2007年の夏には1ドル=120円を超える円安となりました。
FXに参加する日本人主婦を想定してミセス・ワタナベなる名称も付きました。

世界金融危機

2007年夏にサブプライムローン問題が発覚して以降、リーマンショック、ドバイショック、ギリシャ金融危機など、一国が消えかねない事件が次々に起こり、その連鎖は現在進行中と言って良いでしょう。
その間、低成長ながらも安定しているとして、消去法で日本円が買われ、2009年以降は1ドル=80円程度の取引さえ普通といった状態になりました。

ここまで見てきたダイナミックな変化は、これまで実際に起こってきたことです。
ちょっとした合意や一国の思惑で、為替相場が大きく動くことが実感できると思います。
このことから未来に何が起こりうるか想像しておきましょう。